キヤノネットG-III。これはとても楽しいカメラだ。

ボディ

キヤノンのレンジファインダー機であるキヤノネット。それの最終型、「キヤノネット G-III」(QL17)をヤフオクで購入しました。


僕は以前の記事でも書いた通りフィルム一眼レフ「EOS-1N」を持ってるんですが、もう少しオールドライクで気軽にゆったりと楽しめるフィルムカメラが欲しいと思ってました。

なのでレンズ固定式・単焦点レンズ・135フィルムの条件に絞って色々探してたんですが、外見も含めて僕のハートど真ん中にダイブしてきたのがこのキヤノネット!

今回このカメラを買って、改めて写真の楽しさに気づくことが出来たので、ちょっとブログに記してみようと思います。

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1972年3月発売。

この「キヤノネットG-III QL17」は1972年に発売され、その年から実に11年間、120万台が販売されました。
40mm単焦点とf/1.7という大口径レンズを備えた非常に完成度の高いカメラです。

型番にあるQLは”クイックローディング”の略だそうで、フィルムの装填が分かりやすく、かつ素早く行えることが売りだったようですね。(フィルムの装填については後述。)

その辺りも含めてキヤノネットの主な性能を載せておくと、

  • ファインダー:レンジファインダー
  • 測距:光学視差式
  • レンズ:40mm f/1.7 (4群6枚)
  • 絞り:5枚
  • 最短撮影距離:0.8m
  • フィルター径:48mm
  • シャッター:コパル社製・1/4~1/500秒・バルブ・セルフタイマー
  • 自動露出:シャッタースピード優先EE
  • 使用電源:1.3Vの水銀電池(LR44で代用)
  • サイズ:120×75×60mm(※60mmはレンズを含んだ厚さ)
  • 質量:620g

とまぁこんな感じで、今現代においても十分実用できる数値が並んでいます。

ただ、1点、現代で開放1.7と聞くと「凄く良くボケる明るいレンズだな」という印象を受けるんですけど、シャッタースピードが1/500秒までしかないので日中に開放で撮ることはほとんどないと思います。
どちらかというとボケ云々より「暗い場所で明るく撮るため」の大口径かなという気がします。

絞り優先ではなくシャッタースピード優先が付いていることを考えても、この当時は今ほど「背景ボケ」を重視していなかったのかもしれませんね。

参考:キヤノンミュージアム

キヤノネットG-III(G-3)17 - キヤノンカメラミュージアム
キヤノンのフィルムカメラ、キヤノネット、キヤノネットG-III(G-3)17をご紹介しています。

外観

では外観です。


左からフィルム巻き戻しクランク、ホットシュー、フィルムカウンター、フィルム巻き上げレバー。


レンズ部分は先端側から順に、シャッタースピード、ASA(ISO)、絞り値、距離指標(ピント合わせ)になります。絞りと距離指標の間の左に見えているレバーはセルフタイマーのレバーですね。

いや~それにしても素晴らしい意匠です…。発売から45年経った今でも全く色褪せることの無いデザイン。ステキ…。

使い方

続いて使い方です。使い方を知りたくてこのブログを見る人がいるかもしれないので、一応少し詳しく書いておきます。

フィルムのセット

まず、フィルムを装填するため、フィルムボックスを開けます。

左肩の巻き戻しのノブを取り出し、上に引っ張り上げるとパカっと開きます。

フィルムのセット方法は蓋にイラストがあるんで分かりやすいと思います。
フィルムを入れたらフィルムを右側下のオレンジマークまで引っ張り出し、白い歯車(スプロケット)にフィルムの穴(パーフォレーション)を掛けます。

フィルムの穴に白い歯車が掛かったら蓋をし、3、4回レバーで巻き上げます。

当時当たり前だった空シャッターを切る必要がないので”クイックローディング”を謳ったようですね。

この巻き上げ(ローディング)のとき、正常にフィルムが巻き上げられていれば、巻き上げレバーと一緒に

  1. チェック窓の紅白線が動く
  2. フィルム巻き戻しのクランクが一緒に回る

という動作が見られます。
こうならなかったり、レバーを操作したときにガチャガチャという不自然な感触がある場合は、ちゃんとフィルムがセットされていません。

その場合は改めて蓋を開けて、少し多めにフィルムを出し、上下のスプロケットにパーフォレーションを掛けてやると上手くいくと思います。

フィルムを入れたら忘れずASA(ISO)を設定しましょう。レンズ脇にある凹みたいなレバーを押し込みながら回して設定します。

露出合わせ

露出ですが、電池が入っていればシャッタースピード優先の自動露出で撮ることができます。

シャッタースピードを決め、絞りをAに合わせた状態でファインダーを覗いてみましょう!
するとファインダー右脇の絞り値が書いてあり、そのどこかに黒線が入っていると思います。

ちょっと薄いですがこの場合はf/5くらいでしょうかね。これはそのまま「今の明るさならf/5で撮りますよ」ということです。

測光の結果、黒い線が上下の赤ゾーンに入っている場合、露出オーバーかアンダー状態なのでシャッターが押せません。
その場合はシャッタースピードを調整してみて下さい。

露出補正はちょっと裏技的な感じになりますが、ISOの設定を変更することで可能になります。

  • プラス補正→ISOを実際のフィルムより下げて設定する
  • マイナス補正→ISOを実際のフィルムより上げて設定する

これでOKです。

ピント合わせ

ピントはレンジファインダーを覗きながら、レンズのレバーを動かしてマニュアルで合わせます。

ファインダー内の中心に黄色い長方形があるのですが、この中の像が、ピントが合えば1重に、ズレていれば2重に表示されます。

この写真では真ん中のカメラが二重に写っているのでピントが合っていない状態です。調整しましょう。

露出とピントが決まれば後は撮るだけ!

シャッターボタンを押せば、大きな期待と少しの不安、そして軽めのシャッター音と共にコパル社製のシャッターが作動します。

撮ったら巻き上げレバーを使ってフィルムを巻き上げましょう。

この「自分でフィルムを巻き上げる」という作業、たまりませんよね。

撮影が終了したら

フィルムを最後まで使い切り、フィルム巻き上げレバーがそれ以上進まなくなったら、そのフィルムは終了なので巻き戻します。

まず本体下の押し込みのボタン(写真だとピントがボケていますが、三脚穴の左横にあるシルバーの丸いボタン)を押します。

するとボタンが押し込まれた状態になるので、その状態で巻き戻しクランクを出し、矢印の方向(時計回り)に回して巻き戻します。

ちょっと重めなんですが、だいたい30~35周ほど回すと突然軽くなります。それで巻き戻しが完了しているので、あとは蓋を開けてフィルムを取り出し現像に出しましょう。楽しみな瞬間ですね~!

撮った写真

長々と使い方を解説しましたが、ようやく写真を掲載します!正直ショボい写真ばっかりですが、キヤノンレンズ40mm F1.7の描写力と、全体の雰囲気を掴んでいただけたら幸いです。


まずは機窓からの眺め。使用フィルムはKodak Portra400です。
とても40年以上前のカメラとは思えないほど隅々まで綺麗に写っています。
またシャッター音が凄く小さいので、機内でも迷惑を掛けないのが嬉しいポイント。


続いて網目フェンスを手前に入れつつ夕焼け空を撮影してみました。使用フィルムはPRO400H
絞り込んだ際の被写界深度の確認が出来ないんで、どのくらいボケるか分からないのがまた面白いです。


続いてボケ具合を見るため、スーパーマーケットの光をアウトフォーカスで撮ってみました。フィルムはX-TRA400です。
F1.7なのでよくボケてとても綺麗な玉ボケになります。でもただ綺麗なだけじゃなくオールドレンズっぽいボケ感(特に玉ボケの縁取り)も出ていて凄くステキ…。


ついついこういうノスタルジックなシーンを撮りたくなります。X-TRA400。
本当はもっとアンダー気味に撮って手前の人をシルエットにしようと思ってたんですが、露出設定間違えてました。でも現像から上がってくると思いの外綺麗で感動した次第。


車のフロントウィンドに付いた雨。PRO400H。
円形絞りではないので、ボケが正五角形になっていますね。


近所の公園。光が綺麗だったので大急ぎで撮りました。日が消えちゃうのとマニュアルフォーカスどっちが早いかな!というマニュアルフォーカス機ならではの楽しみ(?)も。(Kodak Portra400)


水面。PRO400H。
カメラ自体が小振りで軽いので、ちょっとした被写体を見つけた時に、サッと出してサッと撮れるのが嬉しいです。


窓の景色。Kodak Portra400。光が凄く綺麗に写ってたので感動しました。奥に見える家々も綺麗に描写出来ています。

写真追加。

陽の光がとても綺麗に差していたのでパシャリ。Lomography 400。


ブルーモーメント。F1.7で撮るとかなり周辺光量が落ちるんですが、それがまた良い…。

というわけで、キヤノネットの使い方と写真でした。あまりいい写真がありませんが雰囲気が少しでも伝わりましたかね?また何か撮れたら追加していこうと思います。

感想

では最後に少し感想です!

デジカメやフィルム一眼とはまた違う味がある

今回買ったキヤノネットは、オートフォーカスは出来ないし、レンズは単焦点で固定だし、最短撮影距離は長いしで、現代機に比べるととてつもなく不便です。しかしその不便な過程1つ1つに、普段味わうことのできない趣深さがあることを実感します。

デジカメなら一瞬で出来てしまう作業全てに時間が掛かるんですが、その間に被写体やカメラと向き合って、ゆっくり考えながら撮ることが出来る。デジカメを使っているうちに忘れ去ってしまったことを、少しずつ思い出させてくれる、そんなカメラです。

購入はヤフオクかカメラ屋さんで

そんなキヤノネットですが、僕はヤフオクで購入しました。「QL17 G」とかで検索すると出てくると思います。時に状態が凄く良いものも出てるので探してみて下さい。

ヤフオクが不安な方はやっぱり大きめの中古カメラ屋さんなどに行ってみると良いと思います。ちゃんとしたカメラ屋さんなら整備もしてあると思うし、お店の保証が効く場合もあるので安心です。

ぜひデジタルでは味わえない感動を分かち合う、キヤノネット仲間が増えてくれたらなぁと思う次第です。

▼今回使ったフィルムはこちら。

ボディ
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