先日、約90年振りとなる「ほぼ全部が隠れる皆既月食」が観測されました。天気も凄く恵まれていて撮影するには好条件だったので、僕も撮ってきました。
撮った写真を載せるだけでは面白くないので、今回は天体写真の撮影ポイントを、僕が普段行っている撮影の設定や使っているアプリ、編集のポイント、今回の撮影での気付きなどを出来る限り詳しく書いておこうと思います。どなたかの参考になれば幸いです!
今回撮った写真
今回撮った写真はこちら。比較明合成で、時間変化とともに月食の形の変化を並べてみる、っていう月食写真では良くあるやつです。(思ってたほど月が変化しなかったので、ちょっとイメージと違う写真になってしまいましたが…。)
今回はそれに加えて風景と天体とを一緒に写しているので、ジャンル的には「星景写真」になりますね。
月食自体が非常に珍しい現象ではあるんですが、「月だけ単体で」という撮り方だと他の人の写真と同じになりやすいので、灯台と一緒に撮ってみました。
撮影方法の詳細
それでは天体現象の撮り方を、できるだけ詳しくご説明します。
大まかな場所探しはWebサイトで
まず撮影場所を決めなければなりません。
月は太陽と一緒で東の空から出るので、撮影場所としては東側が開けた場所をイメージすると思います。しかし月の出の方位は日によって結構違うので、最初に以下のWebサイトを使って確認します。
このサイトで日付を入れれば、月の出の方位と時間が分かります。
自分が目標とする景色(今回で言えば灯台)と月が重なる場所を探し、大まかな目星をつけます。
細かい位置決めはアプリで
サイトで大まかな場所を決めたら、今度は現場に行って「サン・サーベイヤー」というアプリで月の軌道を確認します。(有料アプリですが、一度購入すればスマホを機種変しても使えます)

サンサーベイヤーはARで実際の風景に合わせて天体の軌道を確認することができるアプリで、指定した日の指定した時間にその天体がどこにあるかを確認することができます。(指定した日の軌道を確認できるので、事前にロケハンを行うことも可能)
今回は18時2分が月食の極大だったので、その時間に月がちょうど灯台の真上になる位置を探しました。被写体との距離にもよりますが、1m動くとかなりズレてしまうので、微調整が大切です。
ただ、スマホのGPSと方位磁石は、状況によって誤差が生じるため注意が必要です。上の月の出のサイトとサンサーベイヤーの月の出の方位が合っているかどうかを確認し、もしズレているようなら補正しましょう。
機材
続いて撮影に必要な機材をザッと挙げておきます。
- カメラ
- レンズ(できれば望遠のズームレンズが良い)
- 三脚
- レリーズケーブル
僕が使ったカメラは5D Mark IV、レンズはEF100-400mm F4.5-5.6L II IS USMですが、基本的に最近のカメラならどれでも問題ないと思います。
ただ、「少し暗めに撮っておいて、後で暗部を持ち上げる」という後調整を行うことになるので、センサーサイズに余裕があるカメラの方が有利(暗部にノイズが乗りにくい)と思います。
レンズの選択は少々難しいんですが、望遠ズームレンズがあればだいたいのシーンで対応できると思います。また、絞って撮るので別に明るいレンズは必要ありません。
焦点距離と写真の関係としては、
- 風景(今回でいう灯台)と離れているときは望遠で撮れるので月が大きくなる
- 風景が近い場合は望遠できないので月が小さくなる
となります。
因みに作例は112mmで撮って少しトリミングしたので、実質120~125mmくらいです。
設定
カメラの設定は以下の通りです。まだ空が明るい状態から、完全に真っ暗になるまで設定を変えずに撮っておいた方が編集が楽です。
作例での設定は次の通り。
- ISO:100
- 絞り:f/8
- シャッタースピード:1.5秒前後
- 撮影間隔:約1分ごと
- ファイル形式:RAW
とにかく白飛びさせないこと!これを最優先して、もし飛ぶようならもっとシャッタースピードを速めて撮ってもよいくらいでしょう。
実際に撮って出し無編集状態だとこんな感じ。ほとんど真っ暗、月も明るい部分が写っているだけで、実際に目でみた景色よりかなり暗く感じます。
ヒストグラム上でも黒に張り付いています。
これだけ見ると本当に大丈夫なのか不安になるかもしれません。しかし重ね重ねになりますが、とにかく白飛びしてしまうと後の編集でもどうにもならない点だけはお忘れなく!
以上の設定で、後はレリーズケーブルで一定の間隔でどんどん撮っていくだけです。
最初明るい状態から徐々に暗くなっていくので露出の設定が難しいんですが、自分を信じて撮りましょう!
編集
それでは最後に編集です!RAW現像から比較明合成までやります!
まずは一括でRAW現像する
まず、撮った写真の中から一定時間ごとの写真を選びます。僕は実際の撮影では結構な頻度で撮ってたんですが、間隔的に5分がちょうどよかったので、5分毎で選びました。(もっと望遠で撮るなら時間の感覚を短くした方が見栄えが良いかも。)
そしたらその中から1枚の写真を選んでRAW現像します。
ポイントとしては、「月の明るくない部分(地球照といいます)が見え、かつ明るい部分が白飛びしない」ように調整すること。
僕の場合、DPP上で「コントラストを一番下げ、シャドウを一番持ち上げ、ハイライトを一番下げる」という編集を行いました。
あとは他にも明るさを調整したり、ホワイトバランスを調整したりと、そのとき撮った写真に合わせて納得行くまで編集してください。
満足できたら、あとはそのレシピを他の選んだ写真すべてにコピーし、書き出せばOKです!
書き出した写真をPhotoshopで比較明合成する!
最後にPhotoshopで全ての写真を比較明合成します。
Photoshopを立ち上げ、「ファイル」→「スクリプト」→「ファイルをレイヤーとして読み込み」を選択し、上で書き出したファイル全てを選びます。
そしたら、全てのレイヤーを選んで(一番上のレイヤーを選択後、Shiftを押しながら一番下のレイヤーを選べば全部が選択できます)、「比較(明)」を選択。
そうすると、パッとお目当てに近い写真が出来上がると思います。
後は、細かい明るさや色味の編集をひたすら行えば完成です!
因みに、編集前と編集後を比べるとこんな感じ。
再び地球照部分が見えやすくなる調整、色味の調整、あとは灯台を部分的に目立たせるなどなどですね。
比較明合成って他の写真(レイヤー)との兼ね合いで本来見えていた部分が見えなくなったりするので、どうしてもPhotoshop上で調整が必要になることが多いです。
まとめ
ということで、すごく長く、煩雑になってしまいましたが、皆既月食の撮影についてまとめてみました。
僕は今まで部分月食しか撮ったことなかったので、もっと大きく時間変化するかなと思ってたんですが、月が出てくるときには既に半分以上隠れていて、フレームアウトするときもまだ殆ど隠れていたは計算外でした。
その分「ただの三日月でしょ?」みたいにならないように、特に地球照部分を強調した編集を行いました。実際に目でみた印象も凄く地球照部分が見えていたので、その点では思い通りの編集ができたかなと思います。
次回以降の月食の予定
では今回の反省を活かせるチャンスはいつなのか!というと、月食の予定は国立天文台のHPに掲載されています。
今回のようにほとんどすべてが隠れるような月食はめったにありませんが、次回は2022年11月8に皆既月食が観測できるようなので、チャンスがあればぜひトライしてみてください!
そのとき、この記事がどなたかの参考になれば幸いです。
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